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雪が降るまち5-2
 ありふれた暮らしだった。ただ、優しさを知らぬ男だった。二人の人間が様々な遠回りをしてやっとたどり着いた、至福の時間、魂の愛・・・そんなものを分かち合える人がいる。悲しみの大きさだけ、これから二人で作り出す喜びの大きさがあるのだと思う。
ゆきとの時間には何ものにも変えられないやすらぎがある。日々の生活に驚きと発見と魂の覚醒がある。やっと出会えた人生のパートナー・・・同じ瞬間に同じものを見て、喜びや感動を分かち合える人、100%の自分自身の表現を共有できる誰かがいるというのは、人生において本当に幸せだ。

人との出会いは、いろんなかたちがあると思う。人生の様々な場面で出会う何とも妙な縁を感じる人たち・・・
日々の生活で、二人のコミュニケーションが互いを劇的に変える。偶然とは思えない何とも不思議な出来事や、何か以前に見たおぼえのある心にしっくりとはまる感覚・・・人はきっと、大切な出会いの数だけ変わっていくのだと思う。そして、幸せになっていくのだと思う。
人生を共にする片割れがいる。この世で出会って人生を共にする大切な運命の人・・・自分のすべてを開け放ち、心を通わせて生活を共にする人というのは、どれだけ自分自身の人生の良し悪しを左右するのであろうか?
世間で目にする心の通わぬ二人というのは、人生の悲劇のように思う。二人で創り出すことの出来ない本質的な何かを求めて、心が外へ向く。満たされぬ心の内を別の何かで埋めぬわけにはいかないのだろう。
何でもわかる不思議な人に見てもらったら、「二人は、前世の約束で出会った・・・」と言われた。かつて、いろんな都合で思いがかなわず、離れ離れになってしまった二人・・・
何とも不思議な話であるが、今までにない二人の関係の急展開、前世の話を彷彿とさせる現在の僕のまわりの人間関係を考えると、そんなこともあるのかなーっと妙に納得する。
| 雪が降るまち | 21:10 | comments(0) | - | pookmark |
雪が降るまち5-1
 この間結婚したばかりなのに、秋にはもう三人になる。
僕はゆきと生きたいと会ったすぐから決めていた。今までとは何かがちがう妙な予感があった。今まで入籍などは別にたいした問題ではないと思っていた。しかし、明らかに心持ちが変わってきたのだ。入籍した事によって、責任感が生まれた。この人とずっといっしょに年を重ねていくのだと思うと、なんとも言えない幸せ感が心の中に満ちてきた。二人の関係がどう変わるというわけではないのだが、恋愛のときには味わえなかった満ちたりた幸福感がある。
偶然子供ができる直前にはじめたマクロビオティックの食事のせいで、ゆきのつわりはかなり軽かった。自然分娩できるマクロビオティックの助産院が、なんと家の近くで見つかった。はたして大阪にそんなとこあるのか?と思っていたら、なんと大阪のこんな下町にあったのだ。
二人の今の満たされたおだやかな暮らし・・・どうも、お腹の子供が導いてくれたような気がしてならない。実は、ゆきとは出会ってしばらく経った頃、二人の仲を揺るがす重大な出来事が起こっていた。子供ができていなければ、二人の関係は、風前のともしびだったのだ。
| 雪が降るまち | 15:00 | comments(0) | - | pookmark |
雪が降るまち4-4
 先日、侍を退治したので家の空気がよい!?この家に来てから、入口を入って右側の角になんかいるなーっと思っていたら本当にいた。
ひょんな縁から知り合った人にお祓いをしてもらったら、戦国時代の侍が何人かいたのだ!
かなり長い事、成仏できる日を待っていたらしい。
「竹まつ殿、皆で感謝申し上げる。そなたの力になるぞ・・・」といって、消えていったらしい。
そういやこの家に来てから何か気ぜわしかった。何となく気持ちが追われるようにあわただしかった。ふーむ、大阪のこのあたりというのは、その昔、合戦が多かったようだ。それで、大阪城から追われて逃げてきた侍の気持ちが僕のところまで来ていたのだろうか?
そしたら、お祓いをしてもらった次の日から、嘘のように心の気ぜわしさがなくなった。気のせいか、お弁当もよく売れる。
少々高くついた今回のお払い・・・これほどに自分の気持ちが気持ちよく変わるのならば、お払いというのもまんざら嘘でもないのかなーと思った不思議な出来事。まして、これからの大切な二人の新しい生活を考えると、侍のいるところへゆきをよぶことは出来ない。
しばらくは、友達の間でこのネタはかなりうけた。あのお払い以降、明らかに家の空気がちがう。ますます、心地よい。ちーん。
| 雪が降るまち | 14:29 | comments(0) | - | pookmark |
雪が降るまち4-3
 この家に住みはじめて数年になるが、この間はじめてまともにお客さんが来た。結婚祝の持ち寄りパーティーだ。
まだ少々残っていた荷物を整理したら、部屋が驚くほどすっきりしてきれいになった。以前のひとり暮らしの部屋とは、もはや別物・・・しゃれたリビングのおもむきさえある。友達もその変貌ぶりにみんな驚いていた。みんながくれたオリーブの鉢植えがとてもインテリアに合う。きれいになった部屋を一層引き立てる。
僕は仕事柄、朝が早いので十時にはねる。しかし、時間を忘れるほどこの夜は楽しかった・・・満たされていた。長い事、ひとりが好きだった僕もゆきというやすらぎをえた。ふたりで作り出した心地の良い空間へもう何年来の友人たちがやってきてくれた。柄でもなく、友人はいいなーっ、なんて思う。自分大好き、我が道をいくおきらく人間がそんなことを少し思った素敵な夜だった。
| 雪が降るまち | 08:06 | comments(0) | - | pookmark |
雪が降るまち4-2
 ゆきが来てから部屋がきれいになった。生活空間にほこりやチリがないというのは何と心地のよいものか・・・ やはり、女の人というのはえらい。掃除をまめにしてくれる。洗濯もまめにしてくれる。もう、靴下や下着がなくなるということがない。
ゆきは、1DKのマンションでアロマセラピーのサロンをしていた。僕の趣味とはまったく違う北欧好みのきれいなインテリアだ。ゆきの部屋には僕の家とちがって、お客さんがしょっちゅう来る。それで、食器や何やら一人暮らしにしてはものがそろっているのだ。器なんかもちゃんと数人分揃っているし、鍋も五つくらいはある。アロマセラピーに使うでっかいベットに数々の衣装・・・はたしてこれが僕の家にすっきりと収まるのか?と少し心配だったので、ただでさえ僕の少ない持ち物を半分くらいにして、ゆきが引っ越してくるのを待ち構えた。念のため「いるものだけ持ってきて・・・」と言っておいたので、少々は荷物が少なくなっているだろうかと思っていたら、マンションの荷物がそのまんま来た・・・
二階の窓にブラインドが付いた。カーテンが付いた。家具なんかもいろいろあったりする。「あーっ!部屋らしい・・」久しぶりに感じる生活感のある心地のよい暮らし。五月の風が吹き通る気持ちのいい空気。
一階のリビングには、数年前拾ってきたちゃぶ台の代わりに北欧風のダイニングテーブルが置かれた。ちょうど目の高さに庭のもみじやアジサイが見えて、「この放ったらかしの庭もいいものだなー」なんて思う。自分で作ったはだか電球の代わりに、北欧のなんとかいう有名なデザイナーのシャレタ照明が吊るされた。リビングにも、もうひとつテレビがあったりする。ただ広すぎてがらーんとしていた家にものが収まった。長いこと忘れていた普通の暮らしが戻ってきた。あーっ!心地よい・・・二人というのは本当に心地よい。
| 雪が降るまち | 15:23 | comments(0) | - | pookmark |
雪が降るまち4-1
 <おだやかな日々>

何の因果か?前世の約束か・・・のんきに気楽にひとりで生きていた僕が、ついに結婚した。出会ってから半年、人の縁というのは、何とも突然にやってくるものだ。
僕は数年前から、年代物の古民家の一軒家に住んでいる。部屋が四つもあって、ベランダもある。ちょっとした中庭まである。何とも一人の生活には広すぎる感があった。何と言ってもほとんど家具らしきものがないのだから・・・
二階なんかは京間の広い十六畳にテレビと布団しかない。築七十年の建物は、はやりのオシャレな古民家というよりは、中途半端な古ぼけたたたずまいだ。
最初は仕事を本格的にすることのできるキッチンを探していたのだが、家賃がかなり安かったのでここにした。前に住んでいた人が、何十年も食堂をやっていてその設備や家具をそのまま使えたのだ。それで、友人のデザイナーや建築家に相談して、半年かけてコツコツと内装を整えた。それでお店の内装はかなりかわいい。ところが、オーガニックの野菜定食は、地域の濃い土地柄に合わなかった。それで食堂は、三ヶ月でやめてしまった。
妙に余計なところで神経質なのに、掃除はそれほどしないので、家はきれいでない。散らかっているというよりはむしろほこりっぽい・・・やはり、中年男のひとり暮らし、端から端まできれいになるわけがない。
| 雪が降るまち | 14:21 | comments(0) | - | pookmark |
雪が降るまち3-3
 もう今年も残りわずか・・・冬のある日、突然僕の心に雪が降ってきた。ずっと、降り続く雪は、もう僕の心をすっぽりとおおって、全てをまっ白に染めてしまった。やっと出会えた面白くて、おちゃめで、とってもやさしい「ゆき」。
日々の中で、未来の可能性が頭に浮かぶ。「はんまわなーっ」と人に熱く語りだす子供たち。オーガニックのレストランと郊外の森の中のアロマセラピーサロン。三重と大阪を行き来する未来の自分たち・・・
様々な思いが現実のものとなるように、日々ひとつひとつ丁寧に、毎日をふたりで生きていこう。この喜びに満ち溢れた満たされた時間をずっと二人で味わっていこう。二人なら、きっと出来ような気がする。二人の人間が、様々な遠回りをしてやっとたどりついた誠実な生き様と至福の時間・・・
今、永遠のときが始まったような気がする。二人がつくる世界。二人が創り出す新しいなにか・・・そんなものが、二人が今こうして出会った訳のような気がする。一人も素晴らしい・・・心に夢を持って生きる事はこの上ない喜びだ。しかし、今、僕たちは心の安住を手放して、新たなる深みへと歩んでいく。そこに、男と女が二人でしか見ることが出来ない、とてつもなく輝くなにかがあると信じているから。
| 雪が降るまち | 14:15 | comments(0) | - | pookmark |
雪が降るまち3-2
 この感謝を言葉に出来るほど、この愛の尊さを言葉にできるほど、僕は表現を持ち合わせていない。「あなたに会えてよかった・・・」というような簡単なことではなく、人生の結論のようななにか・・・
秋のある日、突然君に出会った。4日目には、もう予感があった。1週間で心を決めていた。様々な人たちとの意味深い出会いの後で、君が何ともあっけなく突然に現れた。君へとつづく道のりがあった・・・今、すべてがはじまるのだ。そして、魂の誇りにかけたこの愛と真実がどれほどにこの世界に通用するものなのか?僕はこれから、君のために、二人のために生きていこうと思う。新たな戦いが今はじまるのだ。
彼女が、宿命の運命のパートナーであるという訳・・・彼女は、僕が今まで出会った大切な人たちの素晴らしいところをすべて持っている。
| 雪が降るまち | 13:33 | comments(0) | - | pookmark |
雪が降るまち3-1
 ありふれた家庭生活があった。世間にありふれた豊かなくらし・・・人生に文句を言う余地など何ひとつなかった。愛と真実という、ただひとつ生命の尊厳を日々の生活で覆い隠したまま・・・
同じ茎から芽を出した二枚の葉っぱのような魂の片割れに出会って、僕はすべてを知った。心のあらゆる垢が落ちていった。そして、心に愛と真実がのこった。まわりにあった全てのものがなくなって、僕は初めて自分ひとりで生きていくという事を知ったのだ。自分自身の足でしっかりと大地に立って歩き始めた。
僕はもう何年も心の旅をしている。自分自身と戦っている。そして、愛を探している。自分らしさが何処かの誰かに届くということ・・・そんなものが少しづつ、わかってきたような気がする。
愛を知るために、知的障害のりゅうちゃんに出会った。彼は、ただただ人を愛することの素晴らしさ、喜びを僕に教えてくれた。傷ついて固く閉ざさせた心に出会った。僕は出来るかぎりの愛でその人をつつんだ。心を尽くしてその人を愛した。それで、見返りを求めない無垢の愛を知った。喜びが計り知れなかった。今、僕は、本当の意味で人を愛せるような気がする。男として誰かを守れるような気がする。
人生というのは、よくもここまで巧妙に仕組まれているものだと思う。出来が悪いほど、膨大な苦労と長い時間がかかる。僕は、今やっと、人として本当に大切なものを得たように思う。
| 雪が降るまち | 20:52 | comments(0) | - | pookmark |
雪が降るまち2-3
 この男は、「自分のことは置いといて誰かの喜びのために・・・」なんてとぼけた事を言う。そんな事、わかっちゃいるがなかなか出来るものでない。みんな幸せになりたい・・・だから、一生懸命自分のために生きているのだ。何をおいても人生の幸せをつかみたいのだ。ひとはみんながみんな、ほぼ自分のために生きている。
たまーに、仏さんのような人がいる。自分自身の人としての存在が、誰かの喜びとなるとき、人は本当の幸福感を味わえることを知っている人だ。自分のために生きる人生なんて、所詮はしれているのだ。物でも事でも、欲しかった何かを手に入れると知らぬ間にまた次の幸せが目の前にぶら下がる・・・幸せのためにがんばってもがんばってもきりがない。今が最高!ということがない。いつまでたっても心は100%満たされないのだ。そういうものではなく、自分の存在が誰かの喜びとなるとき、人の心は何とも素晴らしい喜びと感動を味わうのだろう。
まわりにあったあらゆるものを捨てたら、心の欲までだんだんなくなっていった。もう最近は世間のいろんなものがどうでもよい。無関心で否定的ということではなく、それほどのこだわりや執着がないのだ。仕事も出来るかぎりに自然体に・・・人間関係も出来るかぎりに自然体に・・・自然の流れに身をまかせるように、らくーに、らくーに生きている。
ところが最近、人生をかけなければならない問題が発生した。それは、突然何処からか降ってきた彼女だ。この男には、近年ほれるという感情がない・・・それで、恋愛に対してもそれほどの執着がない。なんて事を言っていたら、今回はなんか違うような・・・「もう、どうしてもこの人と生きたい」なんて思う。それほど、彼女は今までの僕の恋愛になく、自分にしっくりとくる。人として尊敬できる人だ。やっと、お互いに何かを一緒に作り出していけそうな人に出会った。というわけで、もう何が何でも他人のためにでなく、100%自分のために彼女といたいのだ。そのためには、ただひとつ・・・今の仕事を何とかしなければならない。
| 雪が降るまち | 20:32 | comments(0) | - | pookmark |
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