「もんじゅ」とは、高速中性子を使ってプルトニウムを増殖する高速増殖炉、研究途中の原型炉である。政府は2050年に実用化をめざすと言っているが、事故に次ぐ事故によって現在まで6度延期になっており、全く実用のめどはたっていない。
世界の高速増殖炉は、事故と撤退の歴史であり、あまりの危険性から、各国が開発を中止した中、日本だけがいまだに研究を続けている。
通常の原子炉は、水を循環させて炉心燃料を冷やしているが、もんじゅは、ナトリウムで冷やしている。ナトリウムは、空気や水に触れると大爆発を起こすため非常に危険である。
そのもんじゅは、試運転で事故を起こして以来、15年間止まっていたが、2010年5月、試運転を再開した。しかし、約1時間稼動しただけで、炉内の中継装置が原子炉内に落下するという重大事故をおこし、現在また止まっている。炉内に危険なナトリウムがあるため、どうしても復旧することが出来ず、再開のめどはたっていない。今回の事態は、福島原発に匹敵するほどの重大な危険性をはらんでおり、担当者は、事の重大性に自殺した。当初もんじゅの建設費は、360億円であったが、建設終了時には、5900億円。もんじゅは開発が始まって以来、止まっていた15年間も含め、現在も1日あたり5500万円の維持費がかかりつづけている。
プルトニウムの毒性は、ウランの比でなく、もし、もんじゅで今回のような事故が起これば、近畿・東海は重大な放射能汚染を受ける。確実に琵琶湖は汚染され、関西の飲料水はなくなる。がん死亡者予測は、600万人。
もんじゅのある敦賀半島と若狭には、活断層があみの目のように走っており、もんじゅ直下には、2本の活断層がある。1983年、もんじゅの安全審査時にはなぜかパスした。
もんじゅの核燃料であるプルトニウムは、六カ所村の核燃料再処理施設で作られる予定であるが、再処理したプルトニウムをガラス固化する技術が確立されておらず、稼働のめどが立っていない。再処理施設の寿命は、40年であるが、非常に危険な高レベルの放射性廃棄物を管理するために、この先380年間、維持費が電気料金から差し引かれつづけられる。しかし、廃棄物の危険年数は1万年以上。六カ所再処理施設稼働後のコストは、13兆円。
日本の原子力発電所の使用済み核燃料の貯蔵庫は、もうすでに一杯なので、それらは六カ所再処理施設に運ばれている。もし、もんじゅが止まれば、再処理施設が不必要になり、使用済み核燃料は行き場を失う。新たな貯蔵施設建設が難しい現在、原子力発電は中止せざるをえなくなる。廃炉にすべき問題点を挙げれば切りがないにもかかわらず、もんじゅが止まらない理由がここにある。
原子力発電は、単に、電力問題ではなく、莫大なお金が動く原子力開発の仕組みの中、それをやめることが出来ないというのが真実である。政府発表の経済統計要覧によると、1970年以降、最大電力が火力・水力発電の最大発電量を上回ったことは、過去1度もない。